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"一杯のお茶の向こう側へ" 二番茶の収穫期に知ったお茶づくりの本当の仕事

一年のうち、ほんの限られた期間だけ、茶畑と工場が一斉に慌ただしく動き出します。

松阪市飯南町にある茶業会社「茶来まつさか」を訪れたのは、二番茶の収穫が行われていた6月下旬のことでした。

茶畑では収穫が進み、摘み取られた茶葉が次々と工場へ運び込まれていました。

取材に訪れるまで、私は「お茶をつくる仕事」とは、茶葉を育て、収穫し、製品に仕上げる仕事なのだと思っていました。

もちろん、それも間違いではありません。

けれど、実際に茶畑を歩き、工場を見学し、社長のお話を聞いていくうちに、想像していたものとは少し違う、お茶づくりの一面が少しずつ見えてきました。

「お茶をつくる仕事」とは、何なのか。

その答えを探しながら、二番茶の収穫期を迎えた茶来まつさかの現場を歩きます。

一年のうち限られた数日だけ始まる、二番茶の季節

二番茶とは?一年のうち限られた収穫期

お茶は、一年を通していつでも収穫できるわけではありません。

春に摘まれる一番茶に続き、初夏に収穫される茶葉が二番茶です。

収穫できる期間は限られており、この時期になると茶畑と工場が同時に動き始めます。

二番茶について教えていただいたあと、まずは実際の茶畑へ案内していただきました。

まず向かったのは、茶畑

取材当日は梅雨の合間の晴れ間が広がり、目の前には、春先の鮮やかな緑とは少し違う、緑と茶色が混じり始めた茶畑が続いていました。

風が吹くたびに葉がやさしく揺れ、眺めているだけなら穏やかな風景に見えます。

しかし収穫期の茶畑では、茶葉の状態を見ながら、限られた期間で収穫を進めなければなりません。

目の前には穏やかな風景が広がっていましたが、茶畑では休む間もなく収穫作業が進められていました。

社長の話を聞きながら茶畑を歩いていると、ここがただ茶葉を育てるためだけの場所ではないように思えてきました。

その意味を知るのは、もう少しあとのことです。

茶葉はこうして、お茶になる

年に3回しか動かない製造工場へ

茶畑をあとにし、次に案内していただいたのは製茶工場です。

扉を開けると、そこには先ほどまでいた茶畑とはまったく違う光景が広がっていました。

工場内には機械の低い音が響き、茶葉の香りが立ち込めていました。

収穫されたばかりの茶葉も次々と運び込まれ、静かな茶畑とは対照的に、工場全体が休むことなく働き続けています。

この工場が本格的に稼働するのは、一番茶や二番茶、秋冬番茶の収穫期だけです。

摘み取られた茶葉は、その短い期間に一気に加工されます。

収穫後の茶葉は、時間とともに状態が変化するため、工場へ届くとすぐに加工されます。

次々と運び込まれる茶葉を受け入れる現場には、収穫期ならではの緊張感が漂っていました。

お茶ができるまで

工場に運び込まれた茶葉は、蒸す、揉む、乾燥させるといった工程を経て、私たちが普段目にするお茶の姿へと変わっていきます。

工場内にはいくつもの機械が連なり、茶葉が次の工程へと送られていました。

工程が進むにつれて、茶葉は形や状態を変えながら、少しずつ製品へと近づいていきます。

社長は、茶畑での仕事を「原料づくり」と表現します。

収穫した茶葉は、工場で加工して初めて商品になる。だからこそ、お茶づくりを「農業ではなく、製造業」と捉えているといいます。

一杯のお茶は、茶畑と工場の仕事がつながることで生まれていました。

現場で見えてきた、お茶づくりの本当の仕事

「農業は町を守っている」

工場を見学したあと、社長は壁に貼られた一枚の地図の前で足を止めました。

「この赤い印の場所は、弊社が管理している茶畑なんですよ」

社長は、地図上の赤く印された箇所を示しながら、茶畑について説明してくれました。

お茶づくりの現場では、生産者の高齢化や後継者不足が進み、茶畑を引き継ぐ人が少なくなっています。

社長自身も、かつて「このまま自分の子どもたちに農業を継がせてよいのか」と悩んだ時期があったといいます。

それでも、この土地の茶畑を守り、次の世代が農業を続けていける道をつくりたい。

その思いから、仲間とともに茶来まつさかを立ち上げました。

その話を聞いたあと、社長は再び地図に目を向け、こう話しました。

「農業ってね、町を守ってるんですよ」

そして、地図に広がる茶畑を指しながら、さらに続けます。

「これをうちの会社がやめたら、この町、荒れ放題じゃないですか」

その言葉を聞いてから改めて地図を見ると、一つひとつの茶畑が、この地域の風景を支える大切な場所に見えてきました。

これまで当たり前だと思っていた景色も、日々手をかけ、次の世代へ残そうとする人たちによって守られています。

茶畑を守ることは、お茶をつくり続けることだけではありません。

農地を維持し、この土地の風景を次の世代へ残すことにもつながっています。

農業は町を守っている

地図を見ながら聞いたこの言葉が、取材を通して抱いた疑問への答えとなりました。

一杯のお茶の向こう側にあるもの

普段、私たちが何気なく飲んでいる一杯のお茶。

その向こう側には、茶葉を育て、製品に仕上げる仕事だけでなく、茶畑と地域の風景を守り続ける人たちの営みがあります。

次にお茶を飲むとき、その一杯が生まれた風景に、少しだけ思いを巡らせてみませんか。

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