みなさんは、普段、ケーブルテレビをご覧になられていますか?ケーブルテレビは、地上デジタル放送の再放送や過去の放送(20年や30年前の野球中継の再放送なども!!)海外ドラマに映画など、幅広いコンテンツが視聴できるテレビです。
三重県は、全国のなかでもケーブルテレビネットワーク(放送・通信)が高度に普及した県です。三重県ケーブルテレビ協議会に加盟するケーブルテレビ加盟局8社が、それぞれ担当する各エリアの世帯に、サービスを提供しています。
これら、各加盟局の総合的なリソースを集約することで、三重県内の人々の生活に役立つ、より高度で快適な広域・県域のケーブルテレビネットワークサービスの実現に向け取り組んでいるのが、「株式会社ケーブルコモンネット三重(以降CCM)」様です。
今回は、CCM様のインタビューとともに、サンエルが携わったシステムの開発事例をご紹介します。記事では、CCM様の悩みや課題、システム導入までの苦労といったエピソードをインタビュー形式でご紹介します。アナログから脱却し、業務改善を図りたいとお考えの方にとって、少しでもこの記事がお役に立てるなら幸いです。
各加盟局の力になり、三重県下のみなさんにケーブルテレビ番組の魅力を伝えたい!!
株式会社ケーブルコモンネット三重の役割は、加盟局と連携を図りながら、地域住民への貢献に繋げること
CCM様は、三重県のケーブルテレビ事業者4社(ZTV、伊賀上野ケーブルテレビ、アドバンスコープ、松阪ケーブルテレビ)の共同出資により運営されている企業です。
三重県は、全国に比類のないケーブルテレビネットワーク(放送・通信)が高度に普及した県でもあります。CCM様では、事業の柱として「ネットワークサービス、広告や放送関連、共同購入や運用事業」の3つを展開されています。今回の記事では主に、加盟局4局と連携を取りながら、世帯加入者の管理運用を取りまとめる「共同購入や運用事業」部署で必要とされたシステム開発について、ふれています。
ケーブルテレビ放送が急速に普及しはじめた、大きな変わり目の時代に立ち上げられたこの会社は、創業時は当時の役員1名と女性社員1名でスタートしました。今回のインタビューでは、創業時から、当時の役員と二人三脚で事業を推進されてきた総務管理課の課長である川村 明子さんと、システム運用担当者のITソリューション課所属の長尾 悠さんにインタビューをしてきました。
加入者増に伴って増大する、世帯情報の管理業務を改善するためにシステム導入
現在、三重県内の加盟局の取りまとめ、および行政への対応なども行っているCCM様。ケーブルテレビが普及し始めた当時、県内の各加盟局は、購入したい番組を独自で購入していました。そこで、番組を共同購入することで、各加盟局のコスト削減を図るねらいもあり、CCM様が各加盟局を束ねることになりました。川村さんは、現在もメイン担当者として各局の取りまとめ業務を行っています。
―――三重県は、ケーブルテレビの普及率(カバー率)が高いそうですが、そもそも、それはどうしてなのでしょうか?
川村さん:16年前の会社設立当時、三重県下のケーブルテレビカバー率は、全国で3番目でした。当時の三重県知事が、ケーブルテレビを普及させるために注力されたと聞いています。その時代は、ケーブルテレビは、まだアナログ放送で行われていました。
CCM様が、システムをはじめて導入した経緯
川村さん:CCMが設立されたことにより、それまで各加盟局が単独で購入していた番組を共同購入することになりました。それにあたり、CCM側では、各加盟局への請求対応なども行うことになりました。
番組を共同購入する際に、世帯数×各単価の情報が必要になります。日に日に増える世帯加入数に、あらたに増える番組数。また、設立当時は、各加盟局ごとに採用している番組が統一されていない状況であったため、手作業で管理していました。
しかし、次第に増える業務量と請求管理も、無理が生じはじめたんです。
川村さん:私たちの報告先の1つである大手サプライヤーは、番組共同購入する際に、すでに独自の報告システムを使っていました。しかし、16年前当時のCCMは、ケーブル会社ごとの各世帯の番組やサービスの契約内容を、手作業で管理し報告していました。
その後、デジタルアナログ転換期に入り、共同購入で共通のラインナップにしようとする動きもはじまり、ますます管理項目が増えはじめました。
―――当初は、世帯報告に関する管理業務システムは、エクセルを使用されており、その後、システムを導入されたと聞いてます。
川村さん:そうなんです。これ以上はエクセルで管理するのは厳しいと判断し、ある企業にシステム開発を依頼しました。
その頃は、デジタルアナログ転換期でもあり、信号方式が変わりました。これにともない、各世帯が映し出されている画面をデジタル視聴しているのか、またはアナログ視聴をしているのかも管理する必要がありました。そこで、他社が構築してださったシステムを導入し、管理業務を行うことになりました。
しかし、そのシステムは、日々増える新しい情報を、CCM側で追加していく作業などが難しい構造になっており、日々の運用が厳しくなってきていました。
既存システムの改修を経て、一からシステムを再構築~管理業務量が、次第に改善~
―――そして、他社が構築されたシステムを改修したいと、サンエルにご相談をいただいのが約5年前のことでしたね。
川村さん:いちばん最初のサンエルさんへのオーダーは、一日でも早く、既存のシステムを活かしたまま、より良い管理システムに変えてほしいという内容でした。ですが、そのシステムを提供いただいたものの、正直に申し上げますと、そのシステムが実務で馴染まない状況が続いていました。
その後、2021年に入り、CCM様からサンエルに対して「今の状況を解決するためには、どうしたらいいのか」といったご相談がありました。そこで、サンエルからは「一からシステムを構築する」ご提案をしました。
―――弊社の開発担当者に、現状の共有をするのが、まずは苦労されたと聞いています。サンエルの開発担当者たちが、打ち合わせに参加し、仕様説明を聞いた際に、三人とも解釈が違ったそうですね。
川村さん:おっしゃる通りです。この現状の共有が、最も大変だったように思います。今回のネックだったのは、私たちが何を作りたいのかを理解するのが、サンエルさんは難しかったと思います。
けっして、データーの高度な抽出をしたいわけではないですが、なぜこの数字の入力が必要なのかなど、CCMのサービスを理解してもらわないと、その要素の必要性の理解に繋がらないため、そこの理解が一番大変だったと思います。
弊社の長尾も、当初は理解ができなかったので、他社さんとなれば、なおのことだと思います。サンエル開発担当者の方々には、ご時勢的になかなか会えないけれど、一緒に苦労を共にした時間を重ねてきたため、同志のような思いです。
―――チャンネル問題の話は、弊社の開発担当者から聞いています。
川村さん:問題と表現されるぐらい、サンエルさん側は大変だったんですね。そのお話は、同じ番組だけれど、チャンネル名が頻繁に変わる件ですね。弊社としては、今回のシステム用途は、毎月の報告もありますが、世帯偏移のデータ蓄積が重要でした。
つまり、データー分析が大切だったんです。サンエルさんからは「新規チャンネルを作る場合は問題ないが、幾つもの異なるチャンネルが同じ番組を保有している場合に、どのようにシステム上で紐づけさせるのかが難しい」と言われました。
長尾さん:そこで、サンエルさんからは、番組名では統一できないので、同じ番組名だけど、それぞれチャンネル固有のIDを発行することを提案してもらい、その仕様を採用しました。
―――当初、予定になかったCSV形式のデータエクスポート機能を要件に追加したと聞いています。
長尾さん:チャンネル名が変わるたびに、システムに手を加えていては費用もかさむ上、改修にも時間もかかります。そこで、システムで保持しているデータをCSV形式で出力して、フォーマットを変換する方法をとることになりました。
―――今回の新たな「世帯報告システム」を構築で、サンエルを選んでいただくにあたって、他社のシステム会社と比較をされましたか?
川村さん:他社さんと比較検討するよりも、弊社の要望を親身になって理解しようとしてくれるシステム会社があるのかどうかが大切でした。県事業で一緒になったご縁で、サンエルさんならお願いできるのではないかという話に社内であがり、お願いすることにしました。
長尾さん:サンエルさんは、他社さんへ提案する際も、本件のように+αの提案をする機会が多いですか?
―――サンエルの企業理念として、常に「サービスに創造力を」持って、課題解決に取り組んでいます。
川村さん:弊社の案件は、大変だったんでしょうね。
―――対峙する相手がいつもエンジニアの方とは限らないので、どの案件についても、ほぼ要件が決まっていないことが多いです。何を実現したいのか?譲れないポイントは何なのかを聞いて把握することを、わたしたちサンエルは意識しています。
川村さん:今回の相談案件に対して、サンエルさんは、どのように意識して関わって下さったんでしょうか?
―――仕様をつめるのが時間を取ったと思います。アナログと違って、システムで処理することを決めると、例外が起きたり、仕様が変わったりなどが大変になるので、たとえば今回のように、システム導入後に変更される運用方法やデータの取り扱いを予測しながら動いています。
長尾さん:それを具現化しようと思ったら、密な関係構築が必要ですね。
業務の属人化の解消にもつながる、システム導入
―――今回、システム導入したことで、各加盟局の反応はありましたか?
川村さん:今回は、サンエルさんに、システム導入後に各加盟局が戸惑わないような仕組みにしてほしいとむしろお願いしたんです。
―――仕様説明の解釈が三者三様というぐらい、理解が難しい管理業務を、川村さんおひとりで担われていたのは、本当に大変だったろうなと思います。
川村さん:会社設立当時は、常務と二人だったため、電話対応からのスタートでした。前職でケーブルテレビ業界にいたわけでないキャリアからのスタートだったので大変でした。しかし、分からないところから始めたことで、各加盟局やサプライヤーのみなさんに助けて下さり、今があるという感謝の気持ちです。
長尾さん:僕は、その点、私は何かわからないことがあっても川村さんに聞けるのがありがたいと思っています。
川村さん:この先も、一人でこの業務を担うかどうか分からないですし、会社のためにも、いつでも他の人にこの業務を引き継げるようにしたいとは思っています。また、そのためにも、社内のメンバーには、ここまでの経緯や流れ、関係性を理解してもらう必要があると、あらためて実感しています。
業務のデジタル化が、結果的にコストダウンにつながると実感
―――本件のシステムを通して、改善したい点などはありますか?
長尾さん:システムの初期導入時は、スケジュールや予算の関係で実装をあきらめた機能もあり、手間がかかっている部分もまだあります。加盟局やサプライヤー側から、個々で変更の連絡が来た際に社内で設定の修正対応をすることもあるのですが、もう少し簡略化できないかなと思うこともあります。
サプライヤー側への報告に関して、一つ変更箇所がある度にフォーマットを変更しなければいけなくて、ちょっと大変だなというのも正直な思いです。
川村さん:現在は、弊社が、サプライヤー側や各加盟局に報告をする流れです。将来的には、サプライヤー側や各局が、弊社の報告データーを取りにくるシステムなどがあればいいのにと、日々思います。
―――弊社は、まさに今、そのDXを三重県内の企業向けに推進しようとしているんです。
川村さん:DXって何でしょうか?最近、よく耳にしますね。
―――DXとは、デジタルトランスフォーメーションの略語です。デジタル技術を使い企業や人々の生活をより良いものへと変革させることです。
川村さん:他社との請求書やり取りを通して、ダウンロードで情報を取りに行くシステムがあることを知り、本件についても適用できるのでは、といった可能性を感じています。
CCMは利益追求する立場ではないですが、コストをいかに削減し、ケーブルテレビの加入者に還元することが大切なのです。このため管理コストはとても大切なんです。
川村さん:私にしかできない仕事という価値も大切ですが、何か非常事態が起きたときに、交代で代替スタッフがいるのはすごく大切だと思います。
―――当システムを使っていただいた実感として工数が減り、楽になった部分もあるということですが、それ以外にも弊社に依頼する上で、ポイントにされた点は他にもありますか?
川村さん:サンエルの担当者が変わっても、CCM側で管理運用できるシステムを作ってほしいことは大切なポイントでした。5年前に、サンエルさんにお願いしたシステムが社内で活用されていない背景もあったため、上層部の印象を覆す必要があり、2回目は失敗できないという思いがありました。
だからこそ、今回のシステム構築に関しては、一から作るプロジェクトだったので、普段業務を行っている私が最初から打ち合わせに同席することで、要件や仕様について、密にすり合わせを行いました。
また、5年前の初回の案件で納品いただいたシステムは、実用できませんでした。ただ、それはサンエルさんに問題があったわけではありません。短い納期のなかで、充分な時間をかけて両社の相互理解に繋げられかったからだと、今なら分かります。
長尾さん:まったく私も同じ思いです。
―――打ち合わせの時間は、本当に何度も繰り返して立ち戻ってすり合わせを繰り返したと開発メンバーからも聞いております。今回のキーは、認識合わせですね。
川村さん:私はエンジニアではなく、システムに関して詳しいわけではないので、今回の仕様がいいのかどうかは分かりません。ですが、間違いなく管理作業工数も削減できています。サンエルさんが弊社を理解してくれているのはありがたいと思っているんです。
各加盟局の期待にこたえることが、ケーブルテレビ加入者様への還元につながる
長尾さん:できるかぎり、各加盟局に対して、問題や課題があった場合に応えたい気持ちがあります。そして各加盟局が、その先にある加入者様と、より良い関係性が築けれらるように、これからもこのケーブルテレビ事業に携わりたいと考えています。
川村さん:加盟局の方々が単独でできないことを各加盟局と協力し、束になって、みなで動くことで力が発揮できると思います。力を合わせて、寄り添いながら一緒に動きたいと思います。そして、困ったときには弊社を頼っていただけるような立ち位置を築いていけたらと思います。
お客様の課題に耳を傾けることが、DXの最初の一歩
今回、ケーブルコモンネット三重様からお話を聞く機会をいただけたことで、現場で起きている日々のリアルな問題などを知ることができました。DXの実現化とは、高度なシステムの導入や運用だけではなく、身近なデジタルを活用しながら日々の課題を解決することだと実感します。
サンエルには、事業者様のDX推進の支援をとおして、この三重県に貢献し人々の生活を豊かで楽しいものにしたいという理念のもと、メンバーが集まっています。今後もお客様に寄り添いながら、デジタルに関する「ゼロからの導入、設計、開発、運用」を通して、課題解決に努めさせていただきたいと思っております。
オウンドメディアです