
松阪市にある香肌小学校で、動画作成アプリ「iMovie」の使い方を学ぶ授業を実施しました。
今回の授業は、アプリの基本的な操作方法を子どもたちに教えてほしいという学校からの依頼をきっかけに実現したものです。
そこでサンエルは、この機会を単なる操作指導で終わらせるのではなく、子どもたちの表現を支える学びの時間にしたいと考え、授業を設計しました。
授業の軸に置いたのは、「誰に、何を、どう伝えるか」を意識しながら動画をつくることです。
子どもたちは、操作を覚えるだけでなく、素材の選び方や見せる順番、伝わりやすい表現を考えながら制作に取り組みました。
そうした過程を通して、自分の考えを整理し、相手に届く形へと組み立てていく経験につなげています。
今回の授業は、デジタル活用を表現の学びへとつなぐ一つの試みとなりました。
きっかけは「アプリの使い方を教えてほしい」だった
香肌小学校からの依頼は、動画作成アプリ「iMovie」を授業で使いたい、そのため基本的な使い方を教えてほしい、というものでした。
GIGAスクール構想のもとで端末環境の整備が進み、授業で使えるアプリは増えている一方で、それらを学習活動にどう落とし込むかは、多くの学校が抱える共通の課題です。
とくに動画制作は、写真や映像、文字、音、順番など複数の要素を扱うため、最初の一歩でつまずきやすい領域です。
教員だけで操作のすべてをカバーするのが難しい場面では、外部支援に求められるのは「機能説明」だけではなく、「授業として成立させる導線づくり」でもあります。
そのためサンエルは、操作の説明を行いながらも、授業全体をひとつの学習体験として設計する必要があると考えました。
なぜ“使い方”だけで終わらせなかったのか
学校からの依頼は、動画作成アプリの基本操作を学ぶことでした。
しかし、操作方法が分かるだけでは制作は進みません。
動画制作で重要なのは、「何を題材にし、どう伝えるか」を考えることです。題材の選び方や見せる順番、文字や音の加え方によって、伝わり方は大きく変わります。
そこで本授業では、操作指導にとどまらず、子どもたちが自ら考えながら制作できるよう、視点と流れを設計しました。
目指したのは、操作の習熟ではなく、自分の伝えたいことに応じて表現を選び、組み立てられるようにすることです。

専門用語も一つひとつ丁寧に扱い、分からないまま進まないよう伴走しました。
動画制作を「表現の学び」にするための3つの問い
サンエルでは、動画制作を単なる映像づくりの技術習得とは捉えていません。
相手に伝えるために情報を整理し、意図をもって形にしていく学びとして位置づけています。
そのため授業の軸には、「誰に伝えるのか」「何を伝えたいのか」「どのように見せるのか」という三つの問いを据えています。
| 観点 | 内容 |
| 誰に伝えるのか | 地域のどんな場面や魅力を取り上げるかを選ぶ |
| 何を伝えるのか | 地域のどんな場面や魅力を取り上げるかを選ぶ |
| どう見せるのか | 写真や動画、文字、音楽などをどう組み合わせるかを考える |
同じ題材でも、見せ方が変われば伝わり方は大きく変わります。
この視点があることで、子どもたちは機能を試すこと自体を目的にするのではなく、伝えたい内容に合った表現を考えやすくなります。
「型」を示すのは、発想を縛るためではありません。
迷いを減らし、考えるための手がかりとするためです。
特に小学生の段階では、自由に任せるだけでは手が止まりやすいため、表現の土台となる考え方や視点を持てるようにすることが、主体的にデジタルを活用していく力につながると考えています。
子どもたちはどう考えながら動画をつくったのか
本授業ではまず、iMovieを使った動画制作の流れを、子どもたちに伝わりやすい言葉で説明することから始めました。
大切にしたのは、機能名や操作手順を覚えることではなく、「何のためにその操作をするのか」を理解できるようにすることです。
制作は、素材を集め、写真や動画を選び、順番を考え、文字や音楽を加えていく流れで進みます。
この流れを見通せるようにすることで、子どもたちが「次に何をすればよいか」を考えながら取り組めるようにしました。

また、文字は情報を補うため、音楽は雰囲気をつくるため、順番は伝わりやすくするためというように、それぞれの役割を意識しながら制作しました。
完成度を競うのではなく、まずは形にしてみることを重視し、見返しながら整えていくことを大切にしました。
こうした取り組みによって、動画制作を単なる操作の習得で終わらせず、自分の考えを表現し、振り返りながらよりよくしていく学びへとつなげています。
動画制作を通して見えてきた子どもたちの学び
2時限目では、制作した動画の発表後、教頭先生の進行のもと、クラス全体で意見交換を行いました。
発表の場では、作品ごとの見せ方や構成の違いが自然に共有されました。

意見交換では、「文字が少し小さいかもしれない」「もう少し早く切り替えてもよいのでは」といった声が上がり、相手にどう伝わるかを意識したやり取りが見られました。
こうしたやり取りから、動画制作は単なる編集作業ではなく、受け手の視点を踏まえて表現を整えていくものだということが伝わってきます。
子どもたちは、自分の作品を見直しながら、友だちの作品からも学んでいきました。
発表とあわせて意見交換も行ったことで、動画制作が「伝えて終わり」ではなく、伝わり方を確かめながらよりよくしていく学びへとつながりました。
サンエルが支援したいのは、使い方の先にある学び方

今回の授業は、「動画作成アプリの使い方を教えてほしい」という依頼から始まりました。
この依頼をきっかけに、サンエルはその時間を単なる操作指導にとどめるのではなく、子どもたちが自分の考えを形にする学びの機会として設計しました。
何を伝えたいのかを起点に、素材を選び、順番を考え、見せ方を工夫する。
動画づくりは、編集技術の習得にとどまらず、自分の考えを整理し、相手に伝わる形へと表現していく学びです。
サンエルが支援したいのは、ツールの使い方ではなく、相手に伝わる形へと表現していく学びです。
デジタルを活用する場面が増える中で、重要なのは操作を教えることではなく、その時間をどのような学びとして設計するかだと、私たちは考えています。
